働き過ぎ防止のためには付加価値生産性向上が不可欠
日本の工場を見学させていただくと、工場のラインにいる人は限られていて、ロボットの投入で、極限までにその生産性が高められていくことを感じます。
しかし、工場の管理事務所に戻ってくると、沢山人がいて、生産現場とオフィスの光景の差異に驚いてしまいます。
爪に火をともすように生産現場の無理無駄を省いていっても、工場の間接部門の生産性が上がらない限り、付加価値生産性が上がっていきません。
日本生産性本部が発表している2016年の労働生産性の国際比較では、生産現場でロボットが活躍する国とは思えない現状を示しています。「2015年の日本の労働生産性は、74,315ドル(783万円)であった。これは、OECD加盟35カ国の中でみると22位にあたる。米国(121,187ドル/1,276万円)と比較すると、概ね6割程度の水準となっている。2015年の労働生産性が最も高かったのは、アイルランド(153,963ドル/1,622万円)であった。第2位は、ルクセンブルク(143,158ドル/1,508万円)となっている」のです。
図 OECD加盟諸国の労働生産性(2015年/35カ国比較)(出典 日本生産性本部 労働生産性の国際比較2016年版)
ここでは、労働生産性は、 労働生産性=GDP÷就業者数(または就業者数 労働時間)
で計算されています(購買力平価(PPP)により換算)。
日本のものづくりの企業が元気になっていかないのは、
(1)製品やサービスが生み出す付加価値が(ユーザーにとっての価値)が拡大していかない
(2)間接部門に人や手間をかけすぎている
ことが原因であると考えられます。
(1)については、デザインによる価値励起、ユーザー視点にたった価値創造など、このブログで様々にその方策を提案しています。
(2)については、オフィスにおける業務や意志決定のあり方が、ICTが導入されてきたにもかかわらず旧態依然であることによるでしょう。文書を電子ツールで作成しても、決済は相変わらず印鑑による稟議などとなると、意志決定が早くなるはずもなく、かえって手間が増えてしまっている可能性があります。OECD諸国の多くは、ICTにより決済、調達、契約などの手順も大きく換えて、生産性を上げてきたこととは対照的です。
過労死防止、働き過ぎ改革を本当に実現してきためには、(1)、(2)の両面にわたるイノベーションがこの国には必要なのです。そうでなかれば、膨らまないどころか競争相手の生産性向上で縮小しつつある付加価値のパイなかで身動きできず、低賃金労働に頼るという負のスパイラルはいつまでも果てしなく続いていくことになります。