©  by Tomonari Yashiro, The author of Innovation Management : Strategic Thinking for Process and Team Orchestration

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ビッグデータ利活用のための中間組織(innovation intermediary)ー大阪大学データビリティフロンティア機構

June 22, 2016

ビッグ・データはいま流行っている言葉です。

確かに、ビッグデータを、深層学習など様々な種々の人工知能技術を駆使して利活用することは、情報化社会を越えるビッグバンになる可能性は大いにあります。

但、ビッグデータは、単に蓄積すれば良いのではありません。蓄積される膨大なデータを持続的にかつ責任をもって利活用できること(datability)が重要です。

また、databilityを担う人材が決定的に不足しており、人材育成も急務です。

こうした観点から見て、大阪大学が今年度設立したデータビリティフロンティア機構はまさに時機に適った、素晴らしいイニシアチブだと思います。

大阪大学西尾総長は年頭所感でその基本構想を表明されています。

http://www.osaka-u.ac.jp/ja/news/topics/2016/01/files/20160104_01

拝読いたしますと、この構想は、「研究分野で得られるデータは指数関数的に増大し、多次元・多階層化し続け、今や一つの計測データがエクサバイト(10の18乗の文字分に相当)に迫るものも現れ」ており「このようなビッグデータの高度な統合利活用なくして、新しい科学的発見による知的価値の創造や社会的・経済的価値の創出は期待でき」ないという基本認識においています。そして、「本学のすべての学問分野を対象に、実験やシミュレーションのプロセスで得 られたビッグデータを蓄積し、高度な統合利活用が行えるプラットフォームを構築し」、「オープンサイエンスを体現できる拠点を形成」するとおっしゃっています。

筆者からみて、大阪大学データビリティフロンティア機構は、次のような役割を担うことが期待されます。

 

期待1:大学に眠る知の利活用性を飛躍的に高めること

拙著第3章では科学推動型(science push)のイノベーションのプロセスが繋がっていかない「死の谷」をどのようにとらえれば良いのかを説明しました。よく「死の谷」といえば、「科学的発見・技術開発」が「製品・仕組・サービスの開発」に結びつかないmissing linkばかりが着目されますが、実は、「科学的発見・技術開発」から「概念・解決策の創造」を導き、そのうえで「製品・仕組・サービスの開発」至ることで死の谷を乗り越えられる可能性があることを児玉文雄先生の論考を紹介しつつ解説しました。このような経路の開拓には、資金など経営資源の投入というよりも、知の連携が重要になります。学内に眠るデータを開示してくことは、まさに、「科学的発見・技術開発」→「概念・解決策の創造」→「製品・仕組・サービスの開発」という経路を拓くことになり、大学での「科学的発見・技術開発」を変革創始点とするイノベーションを推進していくことになります。

 

期待2:データの開示による研究者文化を変える可能性

英語圏では、バラバラな知を利活用できるように結集させ、解決策の創造に結ぶつけていくためのプラットフォームが次々と生まれ、活況を呈しているように思われます。例えば、

Synapse
https://www.synapse.org/

Harmonized Cancer Datasets Genomic Data Commons Data Portal

https://gdc-portal.nci.nih.gov/

ともすれば、オリジナル・データを保有していることが研究者としての優位性があると考えられてきたきらいがありますが、こうした仕組が普及していくことで、むしろ、データを利活用する能力や、有用なデータを公開する利他性が尊敬を集め始めようとしている、価値転換が起きているように思われます。データビリティフロンティア機構も、こうした研究者のマインドセットの転換を促していくように思われます。

 

期待3:データを介した分野融合の促進

西尾総長のお言葉を借りるならば、「プラットフォーム上で異分野のデータを交差させ、知識統合を図ることにより、新たな融合研究領域での知の創出が可能に」なります。拙著の言葉でいえば大学の「価値創成網形成への能動的関与」を進め、まさに大学が知の創造者・発信者にとどまらず、イノベーションのためのあらたな結びつきを媒介・誘発する中間組織(innovation intermediary)の役割(拙著第10章で解説)を果たすことになります。

 

期待4:人材育成

前記のように、日本ではビッグ・データを使いこなせる人材が決定的に不足しています。この機構の活動には、大学院生や若手研究者が参画していくことになるでしょうから、結果としてデータ(ビリティ)・サイエンティストを育成していくでありましょう。

 

ご担当は、歩容の解析で著名な八木康史先生。

大阪大学データビリティフロンティア機構が以上のような期待を実現していくことを楽しみにしたいと思います。

SLXLM

 

 

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